11/22「合理的配慮を考える」質問と回答

11月22日(土)に開催した講演「合理的配慮を考える」におきまして、参加者の皆さまからたくさんの質問を頂戴しました。西村先生から届いた回答を掲載させていただきます。

Q1.困っているというほどではないが、発達障害という事を隠している学生が、後々に伝えて来た場合の前後の対応。

A1.学生の中には、大学に伝えないで自分の力で頑張ってみたいと思う人もいるので、そういう学生は困ったことが起きた時点で相談に来る場合があります。ただ、合理的配慮の提供は、本人からの意思表明を受けて検討されるものですので、あとあと伝えてきた場合、その時点からの対応になります。たとえば、前期学期の6月初旬に相談に来て、困りごとに対する話し合い(建設的対話)と大学での検討会の結果、合理的配慮の提供を行うことになった場合、それが決定された後、つまり6月の後半から合理的配慮の提供が始まります。それ以前の4月から6月中旬までの修学に関しては、さかのぼって配慮は行わないことになっています。
学生が自分の力でやってみたいという気持ちは尊重する必要はありますが、合理的配慮に関しては、このようなことがあるということを、事前に公開しておくことも重要です。たとえば、障害学生支援に関する内容をHPに挙げ、合理的配慮の申請の手順とともに、「学生本人の意思表明が必要で、たとえば、学期の途中に申請があった場合は、申請前にさかのぼって配慮はできないことも明記しておくとよいかと思います。

Q2.本務校では配慮申請も多くありますが、逆に配慮申請があってもよいと思われる学生が申請しないケースも潜在的にかなりありそうに感じています。診断という点がハードルかも知れないので、窓口では診断の有無(軽重)にかかわらず気軽に相談できる工夫があるといいと思いました。富山大学ではどんなふうにアウトリーチに取り組まれていましたか?

A2.気軽に相談できる工夫があることは重要ですね。私がいたころに限定されますが、いくつか挙げてみたいと思います
①「障害学生支援室」という名称だと抵抗がある学生もいるかと思い、「アクセシビリティ・コミュニケーション支援室」という名称にしました。また、パンフレットを作成し、各学部窓口や学生支援センターの窓口、保健管理センターの窓口に置きました。パンフレットには、「障害」だけでなく、「修学上の困りごとがあれば」という表現をしました。
②新入オリエンテーションで、「支援室」の担当者が利用について説明しました。その際、「障害」だけに焦点を当てず、「修学上の困りごと」を強調して伝えていました。
③一般教養の授業で、障害やコミュニケーション、共生社会などの内容の科目を担当しました。
④身体障害学生に対するピアサポーター養成を広く募り、学習会や実践他大学のピアサポーターとの交流会をしました。障害がある学生がいても当たり前の雰囲気づくりを工夫していました。
⑤支援が必要な学生を担当している教員とのコミュニケーションを密にし、支援室につながると学生の学修保障と教員の負担感の減少のメリットがあることを実感していただくようにしました。そうすると、教員から気軽に学生を紹介してもらえるようになると考えました。
⑥保健管理センターや学生相談室の担当者との連携を強化し、発達障害の特性があると思われる相談者を紹介してもらうようにしました。心理面接と修学支援を分けて対応することによって、オア互いの専門性を十分に生かせると考えたのです。

Q3-①.大学の合理的配慮を1人でさせられてる現状は、どうしたからよいか。

A3-①.支援担当者がお一人であるということでしょうか?大学の規模にもよりますが、各大学には複数の特性のある学生が在籍していると思われますので、それをお一人ですべてを担当されるのは大変だと思います。また、支援者はその都度、さまざまな判断を求められますので、複数の支援者がいるとよりよいかと思います。もし、それが難しいようでしたら、教員の兼任でもよいので、「支援室長」のような立場の方を要求してはいかがでしょうか?あるいは、保健室や保健管理センターにいらっしゃる看護師(保健師・養護教諭)も、日ごろから様々な学生の対応をしていると思われますので、相談者になっていただくことも考えられます。
また、私学でしたら私学助成金を申請できますので、支援学生の人数に応じた除籍金を要求すればよいと思います。「私立大学等経常費補助金取扱要領・配分基準」(日本私立学校振興・共済事業団助成部)」をご覧ください。そうすると、その助成金で支援者を雇うこともできます。

Q3-②.高校まで受けていた支援をそのまま大学でも受けたいという保護者が多い。学生は、自ら学校に支援の依頼をして支援を受けた経験がないためなにも言わないことが多い。大学の合理的配慮の説明理解に苦労する場面が多いためどうしたらよいか。

A3-②.高校までの特別支援教育と大学等の障害学生支援の大きな違いは、「本人の意思表明」が必ず必要である点です。高校まででも、本人の意思表明を大切にしながら合理的配慮の内容を検討する必要はあるのですが、保護者が代わって代弁し、本人には内緒にしてほしいという方もいらっしゃいます。
入学の時点で、大学における障害学生支援の方針を伝え、高校までとは異なる場合があることを伝える必要があります。できれば、大学のHPに「障害学生支援について」という内容を掲載し、支援の方針や手続きの手順などを明記しておくとよいでしょう。自ら学校に支援依頼をした経験がない学生に関しては、話し合いの場を持ちます。保護者には、一応、申し出を聞きつつも、「大学は本人の意思表明が必要なので、学生と面談して配慮内容について決めていきます」と伝えます。
①これまで、どのような合理的配慮を申請してきたか(保護者が申請したかもしれないが、本人はどんな配慮を受けてきたかは言えると思います。)
②その配慮は、学びやすさにつながっていたか? 
③大学の授業で、何に困ることがあるか?
④自分なりにどのような工夫ができるかを尋ねる。
⑤どのような合理的配慮があれば、修学がスムーズになるかを、経験をもとに話し合う。
⑥学生が言えない場合、「とりあえずの配慮内容の提供」を行い、学びやすさにつながったかを聞き取る。
⑦正式な合理的配慮の内容を決定する。
以上、どの大学でも、一番困っている点です。補足が必要でしたらお知らせください。

Q3-③.発達障害の配慮学生における学生間同士のコミュニケーションエラーのトラブル多く、対処困難。どうしたらよいか。

A3-③.発達障害のある学生同士のコミュニケーションエラーによるトラブルということでしょうか?それは大変ですね。
どちらも自論を主張するので、収まりがつかないかもしれませんね。基本的な対処法になりますが、二者間のトラブルに関しては、「自分と相手」という視点では持論を崩さないので、「AさんとBさん」という客観性を「見える化」して示すと理解が進むといわれています。また、トラブルを起こさない工夫についても話し合い、それぞれに相談者を決めておくことも必要かもしれません。あとは、自傷他害の恐れがある場合、「安全配慮義務」の範囲で対応することも伝えておくとよいでしょう。

Q3-④.臨地実習の場面での講義を受けましたが、大学のインターンシップも臨地実習と同じ位置付けで外部に行く前の学生との面談(合理的配慮を受けている現状を実習先へ伝えて調整してよいか)を行い、インターンシップ先との情報共有を行い連携すべきですか。

Q3-④.障害のある学生のインターンシップの場合、同じような手続きをとることになります。学生の意思を確認して、学生が希望すればそうしたほうがよいでしょう。ただ、インターンシップの後、その企業に就職する可能性があるという流れがある場合、企業側はそもそも合理的配慮が必要な学生を一般雇用で採用するか?という問題が生じます。ですので、慎重に対応する必要があります。
富山大学の場合、障碍者雇用枠で就職することを希望する学生に関してはインターンシップ先に対して、企業側と本人が面接する時に支援者も同席し、本人の特性と配慮について伝えていました。一般就職を希望している学生の場合は、障害についてはクローズドでの就職になるので、企業側に配慮を求めることはなく、学生と支援者との面談の中で事前に注意事項を確認しました。インターンシップが終わった後は、仕事内容や困ったこと、うまくできた事などの振り返りを行いました。インターンシップ先は、本人の得意な能力が発揮される(つまり、コミュニケーションが苦手な学生はコミュニケーションが重要なところには行かない)企業を選んでいたと思います。

Q4.現在、発達障害+精神障害を持つ配慮学生がいます。感情コントロールが不安定になっており、授業中やその他の時間で、他者へ暴言を吐き、自傷行為(ハサミで爪を薄く剥ぐ、手の甲にハサミを当てて血を流す)があります。対応について大学で1番困っています。

Q4-①.授業中、自傷行為があっても大人しくしているのであれば見守るように学科は伝えているが、この対応はあっているのか。

A4-①.自傷行為の程度にもよると思いますが、授業時間中の自傷行為を放っておくということは有り得るのでしょうか?ハサミで爪を剥ぐ、手の甲にハサミを当てて血を流すなどの行為は、授業中になされる行為としては不適切な行為ですから、障害があってもなくても、教室の秩序を守るという意味において退室を命じることは可能だと思います。

Q4-➁.たとえば、暴言(教員でも他学生でも)◯回吐いたら出席停止など決めるのは差別にならないですか。もうすでに暴言を吐く自体が、他者への危害とみなし出席停止とし、遠隔授業が可能な場合は自宅から受けること、などの対応をしてもよいのでしょうか。

A4-➁.暴言行為は他害行為に該当するため、一度でもあればそれは許されないことです。〇回という基準は恣意的で、〇回までならどうして許容されるのか?=周囲の学生にそれを受容させるのかを定義することは困難です。出席停止というよりも、上述のように退室を命じることならば可能だと思います。出席停止の意味するところはとても重い措置だと思います。それに該当する行為だったのかを吟味する必要があり、何を根拠にそれをするのかについての説明責任を大学側が負うことになるでしょう。また、それの根拠になるような規定は貴学に存在するのでしょうか。処罰的に出席停止で対応するのではなく、合理的配慮としての遠隔対応を認めるなどすることは、合理的配慮と安全配慮義務の観点で可能なのではないでしょうか?

Q4-③.前述の対応をした場合、回数制限がある授業はそこまでの対応しかできないです。それでも、学校へ通学させること自体が他学生の安全を守れないと判断し、遠隔授業を受けてもらい、代替え課題を与え、単位を取得できる体制にするのは、合理的配慮の限界を超えた対応になりますか。現状、治療に専念してもらうことが専門職種としては最も良い選択肢と考え本人と保護者へ伝えましたが、発達障害の特性上成績の「秀」をとることに強いこだわりをもっており、通学をすると言い、こちらの話は通じず、保護者も理解はできるが4年で卒業してほしいと保護者も授業出席への強いこだわりがあります。この場合、どうしたらよいですか。

A4-③.これも学生との対話により、本人が納得するならば、遠隔授業を選択し、確実に受けていることの証明のために課題を与え、内容が適切ならば評価は他の学生と同等の基準で行うことになります。学生には、安全配慮義務の観点から遠隔授業の実施と課題提出、評価は出席した学生と同じ基準で行うことを確認するということになります。
 「秀」にこだわるとのことですが、合理的配慮の提供を行った場合でも、そのことにより評価を下げることはないとなっていますので、それを本人に伝えればよいのではないでしょうか?ようするに、通学でも遠隔授業でも、到達していれば良い評価になるし、到達しなければ評価は下がることを伝えるわけです。
同様に、4年で卒業を保護者が望んでいるとのことですが、合理的配慮を受けて学んでも、そのことで評価は下がることはない、評価基準は他の学生と同じ土俵であることを伝えます。4年で卒業できるかどうかは、通学でも遠隔授業でも基準は変わらないことを伝えればよいのではないでしょうか?しかしながら、科目によっては、評価がFになってしまうこともあるのは、すべての学生と同じですので、確実に単位が取れることを保証するものではないことも伝える必要はあると思います。

Q4-➃.通学をしている時、万が一他者へ暴言を吐いたりした場合は、授業の進行の妨げとして退室を促そうとしていますが(この場合、配慮学生であってもなくても同様の対応)、退室を促した後「1人にしない」というのがこの学生の配慮だと思っています(すでに自傷行為があり、自死をほのめかす言動もしています)。現在、学部長の提案で、学科で話し合い曜日ごとの対応責任者をシフト制で体制を整えました。これは、合理的配慮の限界を越える対応ですか。学部の教員から「ここまでしないといけないのか」と反発の声があがっています。合理的配慮というが、特別対応ではないかと。合理的配慮の担当者として、教員にどのような説明が必要ですか。

A4-➃.「一人にしない」ということは、合理的配慮ではなく、安全配慮義務として障害の有無に関係なく行われるものだと思います。処罰的な対応からは、何の前進も生み出さないような気がします。もちろん、大変な状況であると思い、どうしたらよいのかと悩むところでもありますが。見守りという名の監視体制を組むことは現状を変え、解決に向かわせる方略ではないような気もします。このことを教育的支援としてどのような方法があるかを考える必要があるかもしれません。
たとえばですが、「他の学生へ暴言を吐いてしまうトリガーは何か?」、「自傷行為をしてしまうトリガーは何か?」、「応用行動分析が有効か?」、「ほかに有効な教育的支援はないか?」などさまざまな本人の自己理解を進める方法を経て見立てるわけですが、本人と対話をしながら、その状況の言語化を助け、メタ認知を促す教育的支援はないか検討する必要があるように思えます。トリガーによって生じた何らかの激しい気持ちへの対応として、その学生は暴言を吐いたり、自傷行為をしたりすることで、自分自身も感じている危機状況を周りに本人なりにわかってもらおうとしているのかもしれないし、自分が不安で不満な状態であることをみんなにわかってもらう手段として使ってきたのかもしれないし、不愉快な状況を生んだ周囲の人たちを黙らせる、静かにさせるための手段として誤学習をたくさん繰り返してきたのではないか・・・など、いろいろ思うことはあります。その誤った対処法を減らすためには、他の方法、つまり周囲に許容される方法に置き換えられるように導くのが有効です。たとえば、暴言を吐きたくなったり、自傷行為をしそうになったりしたら自分から退室する。退室しただけでは落ち着かないなら、先生方と決めたクールダウンスポットに向かう。または、口に出しそうになったことばを、紙に書くでも、スマホに打ち込むでもいい。自己完結できる方法に気を向けられるようにするなど、その学生ができそうな対処法が汎化するまで繰り返し、身に付けさせる必要があるのではないか、それを教育的支援として行う必要がある学生ではないかと思います。支援者が常駐している大学であれば、支援担当者が対話の相手となって、本人に向き合うことも可能かと思います。
回答になっているかどうか不安ですが、今の見守りの対応は教員からの疑問もあるのは当然ですし、それでは解決につながらないように思いましたので、このようなお応えとなりました。

Q5.本学の一年生で親とも相談した結果、進学を機に一度病院で診断を受けることを決めた学生がおります。自閉症スペクトラムの範疇に入る者かと思われますが、これまで診断はおろか診察すら受けた経験はないと言います。よろしくお願いいたします。

A5.ご挨拶くださりありがとうございました。診断ができる医療機関ですが、精神科思春期外来がある病院がよいと思います。兵庫県立こども発達支援センターは発達障害について詳しいと思いますが、15歳までとなっていますね。でも、ここに18歳の学生だけど、どこかで診断してもらえる医療機関を紹介してほしいといえば紹介してくださると思います。ネットで発達障害の診断ができる医療機関の一覧がありましたので、URLを載せておきます。

https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf08/syohuku/documents/ichiranhyou.pdf

Q6.それぞれの神経発達症の事例と対応の具体例をもっと知りたいです。(職場(中高一貫校)では、神経発達症の診断が出ていなくても、大学入試準備の取り組みにおいて、似たような行動を示す生徒がいます。そのような生徒にとっても大いに役立つ内容ですので。)

A6.事例から学ぶことは多いですね。日本学生支援機構のHPには、事例集が載っています。大学での支援ですが、入試に関連した内容もあるので参考になると思います。文部科学省の障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)では、「大学等における障害学生支援は、合理的配慮の提供に限定されるものではなく、各大学等において、障害の有無によらず、学内全ての学生を対象に実施している各種学生支援と併せて行われるものであり、合理的配慮の提供以外の学内の学生支援リソースも総合的に活用しながら行うことが望ましい。」と書かれています。合理的配慮に限らず、さまざまな工夫や教育的配慮などを行うとよいとなっています。大学入試準備においては、学部学科の選択、環境を知る、何を学ぶかを知ると安心すると思います。富山大学で渡しが作成したe-learningコンテンツが、まだ残っていましたので、ご紹介します。これは、大学ごとに異なると思いますが、一つの例として見ていただければと思います。

http://www3.u-toyama.ac.jp/gp07/e-index.html (チャレンジ・カレッジ:高校生向けの紹介動画です。)

Q7.スライド13 最近は保護者のみが配慮を求めて本人が求めていない、または連絡しても返信がない場合(相談に来ない)、配慮や支援をすべきか、または保護者に伝えないといけないのか。

A7.基本的に、合理的配慮に関しては学生からの意思表明が必要です。ただ、これまで自身の障害特性に対する合理的配慮を求めた経験がない学生は、何が合理的配慮となりうるのか(どのような変更調整が学びの保障になるのか)がわからないことが多いです。これは、これまで本人の意向を聞かずに保護者だけで配慮を求めていたからかもしれません。また、連絡しても返信がないことも、自分にその必要性を感じていない、あるいは返信をするという経験がないため、その必要性を感じていないからかもしれません。このような学生だと想定した時に、今後どうすればよいかということですが、
①保護者には、本人の意向を確認するために、本人と面談をしていくことを伝え、とりあえず、保護者が求めた配慮内容が本人の学びの保障になっているかを確認する必要があることを伝えます。
②本人との面談は定期的に行い、話し合いで確認されたことは保護者に伝えることを了承してもらう。
③本人との面談は、時間割に組み込み、その時間に必ず来ることを約束する。来られない場合は、その旨をメール等で連絡することを約束する。連絡がこない時は保護者に連絡することを了承してもらう。
④そのような取り組みに、まったく応じてこない場合は、本人の意思を確認できないだけでなく、合理的配慮の内容が適切かどうかのモニタリングができないので、支援は難しいことを伝える。私の経験では、当初は気乗りがしない学生も、支援担当者と趣味の話ができたり、授業での失敗が少なくなったりすることで、相談するメリットを感じ、通ってくるようになります。ある程度、うまくいく体験をすれば、定期的な面談は必要なくなり、困ったときに相談に来るという形になっていきます。
⑤本人が連絡しても返信がないことや話し合いに来ないときは、保護者に連絡をします。大学の支援は、本人が自分自身の障害特性に対してどのような工夫や合理的配慮が、学ぶ環境を整えていくことになるのかを知ることが重要になってきます。それは卒業後の職業人としての基盤を作ることにつながります。それには、家族の協力は必要です。そのことを理解していただくためにも、現状をお伝えする必要があります。

Q8.当人との話し合いについては大切であることは同意できるが、参加する他学生とのやりとりについて、GWなどをする際に指導することが難しく思える。

A8.グループワークによる授業の場合、指導が難しいと思う場面は多いですね。特に、コミュニケーション上の困難さがある学生の場合、そのことに対する配慮には限界を感じる場合があります。たとえば、合理的配慮による学びの違いが、他の学生にとってえこひいきに感じてしまったり、特別扱いをして有利な条件になっているように受け取られてしまったりすることもあるので、それに対してどう対応するかが重要になってきます。
①大学のHPに障害学生支援について明記する中で、「大学は障害の有無にかかわらず、すべての学生に対する学びの保障を行う必要があり、それは法的義務となっている。障害や病気による学びへの社会的障壁を取り除くための個人に対する変更及び調整が行われており、そのことへの理解は、これから社会に出ていく人はその意味を理解していただく必要があることを明記します。
もう少し詳しく伝えるとすれば、「障害のある学生に対する合理的配慮の提供義務に関しては、法的義務となったものの、画一的な基準を設けることが難しい面もある。障害や病気自体が、個々のケースによって困難さのあらわれ方が異なることと、大学の専門分野によってどのように行うことができるかも異なるので、一人ひとりの学生と話し合う(建設的対話と言われている)必要である。大学としても、学生一人ひとりが安心して学べる環境を整えること、そして同時に評価の公正さを保つことの両立を重視している。大学が行う「合理的配慮」とは、特定の学生を優位に特別扱いするためのものではない。障害によって学修上不利な状況にある学生が、他の学生と同等の教育の機会を保障するためのものであり、結果を保証するものではない。これは、学生を有利にする支援ではなく、障害による学びにくさを取り除くための支援である。また、合理的配慮の内容は、医師の診断書や専門機関の意見書、諸検査の結果等を踏まえ、大学の関係者が協議のうえで正式に認めたものとなっている。したがって、それぞれの学生の障害に応じた対応であり、教員の個人的な判断で行われるものではない。成績評価に関しては、大学としての三つのポリシー(アドミッションポリシー,カリキュラムポリシー,ディプロマポリシー)に示された教育の本質に関する変更はできないとされていて、シラバスに明記されている「授業の目標、内容、評価方法等の内容明確な学修目標と評価基準」に基づいて行われており、合理的配慮によって不当な優位が生じることのないよう配慮されている。」などが考えられるかと思います。
②グループワークなど少人数でのコミュニケーションが必要な時は、グループ内のメンバーにどのように伝えるかを障害学生と相談します。「障害名は言わないでほしいが、発言することが苦手なので分かっていてほしい」という表現で伝えて欲しいという学生はいます。グループ内の役割を決めて、部分的な参加を行うなど、授業内容によって配慮の仕方は異なると思いますが、大切なのは本人と話し合い、どのように他学生に伝えたらよいかを検討し、決まった役割は行うこと等などを確認します。

Q9.発達障がいを持つ生徒への配慮を考える場合、どこまでが合理的でどこからが合理的配慮の範囲を越えるのか判断が難しいと感じます。

A9.合理的配慮の内容を決めるときは、本人の障がい特性が何か、発達検査の結果のプロフィール(強みと弱みを知る)、これまでの経験で学びやすい環境はどのようなものだったか、修学上の困りごとは何か等、総合的な判断が必要です。学びの保障になっているかが重要です。
 「合理的配慮を超える」というのは、本人の障害特性に対する配慮ではないことをした場合、「合理的配慮には相当しない」と判断するということになると思います。たとえば、SLDの特性がある学生で、小学校3年生以上に習う漢字を書くことができない学生に対する配慮として、「記述式の試験は免除する」というような内容を合理的配慮とした場合、「本学生に対する合理的配慮としては適切ではない」という判断になると思います。「PC入力での解答を許可する」とか、「平仮名での解答を許可する」、または、「口頭での解答を許可する」という配慮はあっても良いと思います。
また、過重負担に相当するような対応も、合理的配慮とは言わないとされています。たとえば、「朝起きられないので、毎朝、モーニングコールをしてほしい」というのは、合理的配慮の内容とはならないと思います。たとえ教職員が電話をかけて起こしたとしても、また眠ってしまって、授業に間に合わなかった場合、だれの責任になるでしょうか。朝起きられないという訴えがあった場合、就起のリズムを確認し、寝る時間や起きる時間の調整を図るよう面談の中で指導します。家族の助けが必要かもしれません。ひょっとしたら睡眠外来の受診も必要かもしれません。本人が1限目の授業に出られるようにアドバイスをすることが教育的支援で、大学としてできることはそこまでではないかと思います。

Q10.受診していない、開示していない学生から合理的配慮を求められた場合の対応を知りたい。

A10.受診していない学生から合理的配慮の提供を求められることはあまりないように思いますが、ご本人が特性を有しているという自覚があるということでしょうか?その場合、何に困っているのかを聞き、それが障害特性によるものなのかを吟味します。本人の工夫や教育的配慮の範囲で状況が改善されるかどうかも話し合います。できれば、配慮が効果的かどうか、つまり、学ぶ機会の保障になるかどうかも試してみるとよいかもしれません。
同様に「障害を開示していない学生」に対して、話し合いの場に来てくれるかどうかです。合理的配慮の提供は、根拠が必要です。それがない中で支援を求められても判断することができません。「受診していない」あるいは「開示していない」がくせいには、そうしてしまう理由があると思いますので、それを聞き取り、本人が納得するような形で、正式に合理的配慮を申請するようにしていくとよいと思います。

Q11.欠席回数を考慮して欲しいという学生のオーダーをどう扱っていったらいいか悩んでいます。服薬の調整中やASD ADHDの易労性が背景にあるようです。

A11.欠席回数の考慮は、障害や病気を理由に申し出る学生はいますね。大学によって対応が異なるようです。
①科目によって判断が異なるので、担当教員に任せる。
②欠席回数の用言があり、それを超えると評価から外れるので、診断書がある場合は2~3回の欠席上限を増やす。
③欠席した場合、その日の授業のオンデマンド授業を視聴し、課題を提出すれば出席に相当するとみなす。
本来は、合理的配慮の提供は学生の学びの保障なので、欠席を合理的配慮とすると、教育を受ける機会の損失となるので、それが合理的配慮なのかという疑問も生じます。しかしながら、商機や障害により体調が悪い時があることも事実ですので、柔軟に対応するしかないのかなと思うこともあります。これまで、体調不良が頻繁に起きるケースの場合、日常生活の様子を聞き、就起のリズムは整っているか、食事や休息など自身の体調管理はできているのかを確認しつつ、病院受診による薬物療法や心理療法も行っているかを確認します。生活が乱れ、必要な医療的ケアを受けることなく欠席が続いている場合もあるかもしれないので確認が必要かと思います。学業よりも治療が優先されるケースもあるので、面談をしながら適切な対応を模索していくとよいかと思います。

Q12.発達障害者の大学院生の保護者です。現在、ハラスメントを受けて登校できていません。大学(公立大学)にハラスメント窓口はあるのですが障害者差別について殆ど対象(想定)されておらず相手にされません。専用の窓口が有れば良いなと思います。

A12.ハラスメントを受けて登校できない状況は大変です。障害者差別に関しても、ハラスメント窓口で対応するべきだと思います。たとえば、「障害学生支援窓口」はありますか?一般的に、ハラスメント窓口に相談すれば、障害学生支援室につなぎ、一緒に対応を検討すると思いますが、それもないのでしょうか?NAAHの方を通して、介入していただくのも一つでしょう。公立大学でしたら、県や市のハラスメント窓口を利用するのも一つです。また、関西地区でしたら、京都大学にHEAP(高等教育アクセシビリティプラットホーム)があり、相談を受け付けています。関西地区の大学における障害学生支援について、相談に乗ってくれると思います。一日も早く問題が解消されるように頼れるところをあたってみてください。

https://www.assdr.kyoto-u.ac.jp/heap/counsel

Q13.「それ止めてください」「それ苦手なんです」に、当事者か聞いてくる人が納得するまで説明を求められるのはどうしたら良いですか?

A13.当事者の学生の訴えは聞く必要があると思います。ただ、時間的な限度を決めて聞くとか、話題は一回につき一つに絞って聞くなどの工夫は必要です。話をするときには、言葉だけの話し合いだと理解しにくい場合があるので、図に書いて説明するとか、文字に書いて説明するなどの工夫が必要かもしれません。フローチャートのように図式化すると理解が進む人もいます。経験がないことは想像することができない場合もあるので、「試しにしてみましょうか?」などと誘うことも必要な時があって、その結果を振り返り、可能な方略を検討するということもあります。うまくいかなかった経験を前提に、要求してくることもあるので、工夫や配慮によりできる可能性もあることを経験していただくとよいかと思います。

Q14.外部実習における実習先の理解をどう受けるか

A14.学生を受け入れる実習先も、合理的配慮を提供する義務があります。「だったら引き受けない」と言われたら困るという大学もありますので、どのように伝えていくかは検討する必要がありますね。一般的には、大学側の実習教員と実習先の看護師が支援会議を行い、学生の情報を伝え、どのように実習を行っていくか(つまり、実習における合理的配慮の検討)を話し合います。実習グループの構成やどの診療科から始めるか、サポートする補助が必要か等を話し合うと思います。じっさいには、様々な現職の看護師が働いていらっしゃるので、病院にとっても参考になる配慮だったりすることもあります。大事なことは、障害特性があることを内緒にして実習させるとか、大学が学生を送り込むだけで実習先に対応を丸投げしてしまうなどは、絶対にしてはならないと思います。学生も実習先も大変困る状況になると思います。

Q15.現場の教員は日々のことだけで大変なので(特に中学生)※本文は中高とどの程度やっていくのか線引きがむずかしいです。

A15.ご指摘のように、通学は日々の指導や授業で大変お忙しいと思います。私はいつも思うのですが、小中高校に、特別支援コーディネーターを専任で置くべきだと思うのです。大学は専任の教員または職員が常駐して対応しているところが多いのですが、小中高校は、担任や養護教諭、通級指導教室の担当をしながら、学校全体の支援が必要なお子さんへの配慮について、率先して取り組まなければいけない。ここで私が言っても解決にならないのですが、専任の担当者は必要だと思います。
もう一つの方法は、小中高校の教員が特別支援教育の研修を受け、個々に児童生徒の個別の教育支援計画や個別の指導計画を立てることができるとよいと思います。その時は、すべての教員が特別支援教育に精通していることが求められます。今は、教育学部などでは特別支援教育に関する授業もあるそうなので、発達障害について学んだ教員もいると思いますが、専門学部(理学部や文学部、経済学部など)出身者は、教育心理や教育原理は必須かもしれませんが、特別支援教育は必須ではないと思います。現職教育として研修するということも必要だと思います。

Q16.大学の先生方が合理的配慮についてどのように学ばれているのか気になりました。新人教員の方から合理的配慮が、他の学生との公平を欠かない心配されているケースがありましたので、所属科全体で話し合って対応し、一人で抱えこんだり個人で対応しないようにお話したことがありますか。 どのようなプロセスで対応をきめていくか、先生方も事前に知っていく必要があると思いました。

A16.昨年からすべての大学等で合理的配慮の提供が義務化されたので、私立大学も研修会を開き、学んでいると思いますが、大学によっては、あまり力をいれていないところもあるかもしれません。新人教員も採用された時点で、っ研修を受けるはずなのですが、その研修の中に障害学生支援に関する内容が含まれているかどうかはわかりませんね。おっしゃるように、大学として対応し、合理的配慮について決定する必要があるので、一人で抱え込んだり個人で対応したりしないことが重要です。ただ、これまで個々の先生方が行ってきた「教育的配慮」との区別ができずに、個人で対応しなければならないと考える教員がいるかもしれません。そこは根気よく伝えていく必要があるのでしょうね。大学によっては、いまだに「教員が個々に対応する」となっているところもあると聞いて驚いています。もし、学生や家族から訴えられたら、だれが責任をとるのでしょうね。根気よく伝えていきましょう。

Q17.合配実施にあたり、保護者対応(クレームや要望)優先で本人不在感があります。保護者自身にも合配はなにかもっと互いに学び合う必要を感じましたが、どのような工夫や実践があるか教えていただきたいです。

Q17.高校までの特別支援教育においては、本人不在で保護者が要望することがいまだに多いですね。私の経験では、小学校中学年くらいから本人の意思を確認して配慮を提供している事例を経験しています。もっと早いのは子ども園の年長から自分で言える子もいました。それは、話し合って、試してみて、うまくいったら褒める(認める)ということを繰り返しているから可能になったのです。保護者はどうしても本人の表現できないところを補おうとされますので、つい口出しをしてしまうのですが、教員や支援者がその都度、本人と話し合って進めていくと、本人のほうから「僕はこうしたい」と言えるようになっていくようです。
もちろん、保護者の中にも本人と話し合い、親としての考えも伝えながら、本人の意思を尊重して決めていくご家族もいらっしゃいます。保護者は合理的配慮の意味を学んでほしいですね。それには保護者に話し合う場と人がいることが大切です。学校の中にいる特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラー、地域専門相談員、あるいは地域発達相談センターや教育センターなど、専門家との対話の場を設ける必要があると思います。地域の各支援機関の連携は重要で、保護者の了解を得ながら協働していく体制づくりが求められていると思います。

Q18.さらに深い内容で、建設的対話がうまくいかなかった場合など、紛争につながる事例、裁判事例などもお聞きしたいと感じました。

A18.そうですね。うまくいかなかった事例は非常に参考になると思います。建設的対話がうまくいかなかったことは私の経験ではありません。その理由は、支援が必要な学生とは定期的に面談を重ねているので、合理的配慮に係わる話し合いの時も、スムーズに話し合うことができるからだと思います。たとえば、初めて受講する科目の教員との話し合いの時も、支援者が仲介し同席するので、話し合いはスムーズにいきます。教員と学生との間に入り、メディエーターとしての役割をするから紛争にはならないのです。
また、学生と支援者との相性(?)というか、学生に特性があるように、支援者にも個性(特性)がある場合があるので、どの支援者が担当するかは重要です。私の場合、複数の支援者がいたので、記録をとってもらい、その記録がすぐに閲覧できるようになっているので、うまくいっていなさそうだったら、介入します。また、支援者が二人ペアになって一人の学生の面談に入ることもありました。
紛争につながる事例は、相談の中ではあるのですが、詳しくは言えませんが、いずれも対話が足りないことが原因の場合が多いのと、学生の問題行動だけに焦点を当てて対応した場合もうまくいきません。また、教員が一人で抱えこんでしまい訴えられ、教員がドロップアウトしてしまったケース等もありました。裁判事例は経験がないので、日本学生支援機構などで検索してみてください。

Q19.現在、合理的配慮の担当をしています。義務化されたにも関わらず、大学は何も変わろうとしないし、変えようともしません。担当者として配慮学生の申請~卒業までの対応を1人で任されており、年々増加する発達、精神障害、その他様々な障害、病気への大変さ、教員とのトラブルが絶えず、1人では限界です。傷害学生支援委員長や事務局長にも数字をデータとして適時報告していますが、チーム体制やコーディネーターの必要性を感じてくれません。現状、1人ですること自体おかしい状況ですが、それを感じていない大学への監査や調査、指摘などしてくれる機関や人物はいないでしょうか。文科省とJassoは義務化されました。あとは大学ごとに方針を立ててくださいというお達しがあります。大学の方針をどうしますか?と大学に訴えかけても配慮学生にそこまでしないといけないのかと言われたことがあります。この担当者をさせられていることが苦痛です。何か手立てがあれば教えてください。1人でさせられているため相談できる人がいないです。

高校までと同じような支援をして欲しいという新入生と保護者が年々多いと感じる。特にこの2年の間、特に発達障害をもつ学生と保護者、説明しても、納得できない、理解を得られないときが多く、保護者からの電話連絡も絶えないです。何か対応方法として有効なものはありますか

発達障害の学生が他学生とコミュニケーションエラーでトラブルになることが多いです。どのような対応が有効ですか。

A19.お一人で対応されているとのことですが、大学の理解がない中でできることは少ないです。大学によって対応の状況はバラバラで、ご経験されているような大学も存在するのが現状かもしれませんが、大学としての方針が「対応要領」、「対応指針」を作成しないといけなくて、その中に、「委員会の設置」「合理的配慮の決定過程」が盛り込まれているべきで、合理的配慮は大学の責任で行う必要があるという基本的なところが整っていないのですね。
関西だと京都大学に相談窓口があります。京都大学にHEAP(高等教育アクセシビリティプラットホーム)があり、相談を受け付けています。関西地区の大学における障害学生支援について、相談に乗ってくれ、大学への働き掛けもしてくれるのではないかと思います。

https://www.assdr.kyoto-u.ac.jp/heap/counsel

保護者への対応は、高校までの支援スタイルとの違いを理解してもらいにくいと思います。大学の支援について、HPやパンフレットで明記する必要があります。入学してから説明するよりも、入学前に大学の支援に関する情報があると、入学後の混乱が少しは減少するのではないかと思います。また、お一人での対応だと難しいかと思いますが、支援学生との面談の時間をとることで解消される不満もあります。
私の経験では、学生とは週一回の面談、保護者とは月一回の面談の場を設けました。遠くの保護者には、入学時に面談し、その後は電話やメールで近況報告をしていました。その際、学生の頑張りも伝えつつ、「このような配慮をしたけど、本人が授業を休んでしまって欠席が続いている」等の情報も伝えていました。
支援者が孤立している状況は誰が担当しても苦しい状況だと思います。傷つくことも多く、同じ支援者に話を聞いてもらったり、どうにもエネルギーが出ないときは代わりに担当してもらったりしながら対処していました。同じ支援者としての経験がある者として、書いてくださった内容は、私のいた大学の立ち上げ直後の日々を思い出します。無理をなさらないでください。

Q20.実習科目に対する配慮対策について他の例を知りたいです。

A20.看護の先生方との科研でまとめたガイドラインがあります。ここから、ガイドラインを見ることができます。その中に、配慮対策が例として載っていますのでご覧ください。

https://www.yasukata-b.jp

Q21.国家試験の合理的配慮についても可能ということですが、どういう事例があるのか、申請手順とかわからないと相談を受けたことがあります(建築士をめざす学生の保護者から)

A21.国家試験の合理的配慮は、まだ正式には整っていないかもしれません。私は看護や医師の国家試験について学生から聞いたのですが、建築士の場合は経験がありません。専門の教員にどのような手順で国家試験を申し込むのかを尋ね。その中で、合理的配慮の申請について明記してあるかどうかを調べることになるかと思います。

Q22.私は障がい者枠で働いて2年経ちますが、発達障がいの名前は知れ渡っても内容が分かってもらうまでの配慮が整っている仕事が増えてほしいです。

A22.その通りですね。「発達障がい」といっても、特性や支援してほしいところはそれぞれ異なりますから、ご本人に合った配慮が必要だということを知ってほしいですね。もし、ご自分で伝えていきたいと思われたら、NAAHの方と話し合って、どのように伝えたらよいかを吟味したらよいと思います。仕事は工夫や合理的配慮によって、より働きやすくなることがあります。また、慣れていくと、より働きやすい仕事が見えてくるかもしれません。時々話をする機会を持って、現状を客観的に見つめる時間をとったらいいかと思います。

Q23.LD生徒に対する様々なjctを使った支援について具体的にアプリなどを教えていただきたい。LDについては何にこまっているのかをしっかり把握できないと難しいと考えるが、そのためには検査は必須でしょうか?

A23.SLDに関しては、検査は必須だと思います。私が働いている発達相談センターでは、WISCとURAWSS、STRAW-Rをしています。私はSLDのことは専門ではないので、詳しい方に尋ねました。
①読み障害の方への支援について:PCでもある程度のことはできますが、やはりタブレット端末、中でもiPadが一番使いやすいようです。写真アプリをかざして書類をスキャンすると、文字情報を選択できます。選択したものをコピペもできますし、iPadの選択項目の読み上げの設定をオンにすることで、選択した文章を読み上げることもできます。Androidですと、Googleアプリでカメラを起動して文書をかざすと同様のことができます。どちらの機能もスマホでも可能です。ある高校生は、「教科書を読みたい」との希望があり、Access Readingを紹介しました。Access Readingは高校の教科書の音声教材化を積極的に行っているようです。
②算数障害について(私が知りたくて尋ねました):スクリーニング検査としては、2つです。
・「特異的発達障害ガイドライン」という書籍の中に小1〜6のものがあります。
・熊谷恵子先生の「算数障害スクリーニング検査」という書籍が学研から出ています。
相談機関からお尋ねがあった時に、福井大学の藤岡先生のHPをご紹介しました。

Q24.起立性調節障害で朝起きれず、1限に出席できないが配慮してもらえないか?

適応障害等の診断書が出たのですべての授業をオンラインにしてほしい。個室対応希望→学内に空き教室、場所がない。

A24.基本的に治療を受け、日常生活の見直しを行いながら、合理的配慮について検討することになります。病気や障害に関わる欠席は、どのように対応するかは大学によって異なります。欠席の回数を決めている大学もありますし、「障害による欠席の場合は、オンデマンド授業を受けて課題を提出すれば、出席とみなす。ただし、〇回まで」というようにしている大学もあります。合理的配慮の提供は、教育を受ける機会の保障ですので、欠席した場合、どうやってその時間の教育の機会を保障するかは難しいと思います。
「すべての授業をオンラインに」という申し出も、科目担当者が、その形で教育目標を達成できるかがカギとなります。放送大学のようにオンライン授業を前提とした大学ではなく、対面式の授業を基本とする大学で、このような申し出をどう扱うのか検討する必要があると思います。
「個室対応希望」に関しては、試験のときのことでしょうか?それともすべての授業を個室で受けたいということでしょうか?場所の確保ができない場合、そのことを前提に学生との話し合いを行うことになります。代替の配慮があるのかを一緒に検討するということです。